重度な歯周病を改善させるFMDという治療法

重度の歯周病の人は顎の骨が溶けてしまい歯を支えることが難しくなり、歯がぐらついて最終的に抜け落ちてしまいます。
歯周病は細菌感染症です。完治させるには細菌を確実に取り切ることが非常に重要です。

保険医療制度による歯周病治療の実態

保険医療制度を活用して歯周病の治療をすることは可能です。
ただし、一度に処置できる部位が決まっています。
口の中を大きく6ブロックに分けて、1ブロックずつ治療していく必要があります。歯周病は細菌感染症です、1ブロック丁寧に清掃してもお口の中にはまだ歯周病菌が残っており、次第に清掃した部位も再度感染してしまい完治に至りません。

日本顕微鏡歯科学会の認定衛生士が在籍

当院には日本顕微鏡歯科学会の認定衛生士が在籍しています。

FMD(フルマウスディスインフェクション)・抗菌療法とは

歯根面のデブライドメント(SRP スケーリング・ルートプレーニング)は4~6回に分けて行うのが一般的です。しかしこの方法だと、最初にSRPを行った部位では歯周病原細菌は減少しますが、まだSRPを行っていない部位には細菌が残っているため、そこから再感染(伝播)が起こってしまいます。

そこで、短期間(可能であれば24時間以内)で歯周病原細菌に感染した全ての歯に対してSRPを行い、歯周病細菌を他の歯に転移させないようにするのがFMD(フルマウスディスインフェクション)です。

また、歯周病原細菌検査によって検出された細菌の種類に応じて抗生物質を処方し、口腔内から病原性細菌を除菌する方法を抗菌療法といいます。FMDと抗菌療法は同時に行いますが、これはFMDに伴う菌血症のリスクをコントロールする上でも効果があります。

ここで大切なのは、抗生物質の服用のみで歯周治療は完了しないということです。歯周炎を惹起する細菌は薬剤に抵抗性を示すバイオフィルムという形態で根面に存在し、加えてLPS(細菌の内毒素)等を含む有害な物質も根面に付着しているため、歯根面のデブライドメントが絶対に必要となります。

この方法により、感染症治療の達成、初期治療の早期化、再生治療の成功率の向上、歯周病原細菌の家族内伝播の抑止、歯周病に起因する全身疾患の発症予防・治療、といったメリットが期待できます。

重度歯周病に対する処置方法

歯周治療の基本は、プラークの除去と歯根面のデブライドメント(=歯の表面から感染を除去する)を確実に行うことです。しかし、このような通常の歯周基本治療を行っても良好な反応が得られないケース、またメインテナンス中に予後不良の経過を辿るケースに遭遇することがあります。

様々な疫学調査からこれらの確率は10~20%と言われていますが、原因の一つに特定の病原性が強い歯周病原細菌に感染している可能性、また免疫系の異常が考えられます。このようなことが疑われる場合、当院ではまず問診ならびに歯周病原細菌検査、血清抗体価検査を行い、リスクの判定を行います。

問診:糖尿病などの全身疾患等で非特異的免疫が低下しているかを調べる
歯周病原細菌検査:病原性が強い歯周病原細菌に感染しているかを調べる
血清抗体価検査:歯周病原細菌に対する特異的免疫が低下しているかを調べる

病原性が強い歯周病原細菌に感染している、また免疫が異常を呈しているということは、簡単に言えば体内に侵入してきた病原性細菌を自分で駆除できない状態です。そのため通常の歯周治療が奏功しない場合が多く、FMD(フルマウスディスインフェクション)や抗菌療法といった特別な対応が必要となります。

【治療の流れ】
【治療の流れ】

抗菌療法+FMDで対処したケース

【治療前】 初診時の歯周病原細菌検査
総菌数 4600000cell
P.g. 菌 490000cell (11%)
A.a. 菌 検出されず
T.d. 菌 33000cell (0.72%)
T.f. 菌 280000cell (6.1%)
P.i. 菌 800000cell (18%)
抗菌療法+FMDで対処したケース【治療前】
【治療後】 FMD後の歯周病原細菌検査
総菌数 120000 cell
P.g. 菌 検出されず
A.a. 菌 検出されず
T.d. 菌 検出されず
T.f. 菌 検出されず
P.i. 菌 検出されず
抗菌療法+FMDで対処したケース【治療後】
全顎的に様々な問題がありますが、特に臼歯部を中心に深い歯周ポケットが認められました。歯周病原細菌検査で病原性の強い歯周病原細菌に感染していること、また血清抗体価検査ではその細菌に対する免疫に異常がある(=自分の免疫で病原性細菌を駆除することができない)ことがわかったためFMD(フルマウスディスインフェクション)と抗菌療法、それに併せて咬合のコントロールを行いました。術後の再検査では除菌が達成されていることが確認でき、最大8mmあった歯周ポケットも4mmまで減少しました。

抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース

【治療前】
抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース【治療前】 抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース【治療前】
【処置中】
抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース【処置中】 抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース【処置中】
【治療後】
抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース【治療後】 抗菌療法+FMD+歯周再生療法で対処したケース【治療後】
上顎前歯部に垂直性の骨欠損が認められます。歯周病原細菌検査で病原性の強い歯周病原細菌に感染していること、また血清抗体価検査ではその細菌に対する免疫に異常があることがわかったため、まずFMDと抗菌療法を先行し除菌を行いました。再検査で除菌が達成できたことを確認後、エムドゲインと骨補填材を併用した歯周再生療法を行いました。術後のエックス線写真や歯周組織検査では歯周組織が回復していることが確認できます。

こちらでは当院で行った歯周病治療の一部をご紹介しましたが、このほかにも多くに症例に対応してきた実績があります。歯周病についてのお悩みがありましたら、まずは一度ご相談ください。

詳しい症例をご覧になりたい方は当院の包括的治療でご確認ください

~治療後のプラークコントロールが大切です~

~治療後のプラークコントロールが大切です~

歯周病治療は、一旦終了した後にも適切なメインテナンスを継続し、プラークコントロールを行っていくことが大切です。メインテナンスを怠れば、お口の中には再びプラークが溜まり、歯周病が再発してしまうからです。よい状態を維持するために、治療後はブラッシングや定期検診でしっかりとプラークコントロールをしましょう。

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